小学生のころ、退屈な授業中に教科書の端にパラパラ漫画を描いた覚えはないだろうか?少しずつ変化する絵を描く必要があるため、それほどリアルな絵を描くわけにもいかず、だいたいはハリガネ人間が動くものだったと思う。教科書のページを指でつまんでパラパラとすると、ハリガネ人間が走り出したり、棒高跳びをしたり、突然宇宙に飛んで月にぶつかったり、、、あるいは「クレイアニメ」といって、粘土で作られたものが動いているように見えるアニメを観たことがあるだろう。さすがにクレイアニメを自分で作ったことがある人はいないと思うが。
これらはいずれもアニメーションの原理を表すものである。一コマ一コマは静止画なのだが、それが一コマずつ少しずつ変化していて、それを高速に差し替えることで、残像の作用により動いているように見える、ということ。これはパラパラ漫画やクレイアニメだけではなく、テレビも映画もすべてこのパラパラ漫画の原理によって動いているように見えるのである。例えば日本のテレビは1秒間に30コマ(正確には29.97コマだが細かいことはまあいい)、映画の場合は一般には1秒間に24コマパラパラしている。なので一コマずつコマ送りできるようなもの(例えばビデオ編集機)でテレビの映像を一コマずつ送りながら見るとすると、1秒分の映像を見るために30回コマ送りボタンを押すことになる。 クレイアニメは一コマ撮影しては粘土を少しだけ変形させて、、、というのを繰り返す。1秒間に24コマで5分もののショートアニメを作ったとしても、24 x 60 x 5 = 7200ということで、撮影して粘土を変形して、、、を7200回繰り返す、という気の遠い作業になる。私なら途中でイーーーッとなって投げ出してしまうだろう。
CGでアニメーションを創る場合は、コンピューターを使うということで一コマずつ変化させながら描くということがもう少しは楽な作業である。例えば実際の人間の動きをデータとして記録し、それをCGのキャラクターの動きに反映させるモーションキャプチャーという技術は映画などでも使われている。また、ここでこれから学ぶジェネラティヴ・アートについて言えば、一コマを描く際に各要素の状態や位置を表すパラメーター(数値)を一コマずつ変化させながら描くことで、それをパラパラとすると動いて見える、ということだ。例えば下記は私がプログラミングによって描いた動画作品” Just alive (with no particular aim) 20190101 CompoundDigitalMicroscope version(「(特に目的もなく)ただ生きている20190101 複眼顕微鏡バージョン」)”という作品である。
こちらはパラメーターを少しずつ変えながら1秒間に30コマの静止画像を1分間分描いている。つまり、30 x 60 = 1800コマの静止画像からなるものである。これを作家の手を動かして描くとなると本当に気の遠くなる話だが、この作品はプログラムによって描かれているものなので、1800枚の静止画を描くとしてもすべて自動でできる、というわけである。このようにして、CGでのアニメーションは作家の労力をそれほど必要とせず、作家の意図したとおりのものを作ることができるものである。
【今回のまとめ】
・複数の静止画を少しずつ変化させたものをパラパラとすることで動いているように見える。
・テレビや映画などの動画もすべてこの仕組みでできている。
・CGにおいては、一コマずつの変化を比較的簡単に行うことができる。