だいたい何らかの新しいものごとを始めてみようと思って、初心者向けの本を開くと、「〇〇とは」という定義から入ることが多いが、たいていは読みとばすか、お堅い定義を読んでいるうちに眠くなってくるか、せっかく盛り上がっていた好奇心が急に失せてくるか、ということが多い。とは言っても、「ジェネラティヴ・アート」という言葉を初めて聞いた方のために、ゆるーくだけ(そして雑に)説明するならば、「コンピューターにプログラムを書いて創るアート。あ、ただし、フォトショとかイラレを使ってガリガリ描くのではなくて、ある程度の不確定要素を盛り込んで、プログラミングした人にも予測不可能なものが出来上がるようなもの。」といった感じかな。 うーん、我ながらかなり雑ではあるが、ポイントは抑えている、とは思う。要するに、1.作者の手を動かすのではなく、2.すべてプログラミングによって、3.だけれども不確定な要素がある。という3点が満たされているようなアートのことだ。もっと正確な定義は自分で調べてください。
私は自分の手を動かすことなく、プログラミングだけで絵を描いたり、たまには動画を創ったり、ということを30年以上やってきた。「ジェネラティヴ・アート」という言葉を知るようになる以前から、上記の3点を満たすようなものを作り続けてきた。ジェネラティヴ・アーティストとしてはかなりベテランになるかと思う。この便利な言葉「ジェネラティヴ・アート」という言葉を知るまでは、私はただ「プログラマー」と名乗ってきた。だって「アーティスト」という自覚が全くなかったから。実際に生計を立てている職業はプログラマーで、普段はアート作品を創っているわけではない。 だが最近になってこの「ジェネラティヴ・アート」という言葉がかなり普及してきたので、そろそろ「ジェネラティヴ・アーティスト」と名乗ることにし、作品をどんどんと世に発表していこう、と決心した。その決心を形にする第一歩として、毎日作品を一点、Instagramにアップしていくことにした。もうそれを始めて半年以上になるが、Instagramへのアップは一日も欠かさず毎日続けている。Instagramのアカウント名は@teshnakamuraなので、一度見ていただきたい。–> https://www.instagram.com/teshnakamura/
Instagramの私の作品を見ていただくと、明らかにコンピューターで描いた、ということはわかっていただかると思うが、それでも、フォトショやイラレ、あるいは3Dの絵を描くものを使って自分の手を動かした、とは思えないはず。つまり、これらは全部計算で描いている訳だけれども、それでもその計算のプログラムを書いた私自身にもどういう絵が描かれるのか、ということがある程度しか予測できないものなのだ。ここで「ある程度しか予測できない」というところが実はミソで、「まったく予測できない」という訳でもない。どういうことなのか? ここでたとえ話をしてみよう。たとえば私はある「風鈴アート」のアーティストだとする。そんなのが本当にあるのかどうか知らないが。風鈴アーティストはいくつかの風鈴の音色と音階を選んで、それを並べる。私は沖縄音楽っぽくしたかったので、レとラを抜いて、ド、ミ、ファ、ソ、シ、ドの6つの音階の風鈴を並べた。(本当にレとラを抜いてテキトーに楽器を奏でると沖縄音楽っぽくなるので試してみてください)そして風が吹くのを待っている。風が吹くと、私が並べておいた風鈴が私の思った通りの音色で鳴るのだが、そこで吹いた風によって奏でられるメロディーは私には予測がつかない。ただ、そこには私が選んだ音階のものだけを並べてあったので、ある程度の予測はついていた。私が意図したとおり沖縄音楽っぽいメロディーが奏でられる。 要するにジェネラティヴ・アートとはそういうものだ。
そしてここでは、プログラミングという技術を使ってジェネラティヴ・アートを創る方法について、これまでまったくプログラミングをしたことがない、というアーティスト達に向けて綴っていこうと思う。まったくプログラミングをしたことがないアーティストにとって、0からプログラミングを学ぶということは簡単なことではないと思う。途中で挫折することもあるだろう。あるいは本当に風鈴を選ぶことの方が楽だ、と思うかもしれない。ここでの目的は、プログラミング技術だけを習得してもらう、ということではないので、その他にもアートについてのあれこれや、時には根性論を語ることもあるかと思う。(根性論がメインになってしまう可能性もあり)
アーティストがここで学んだことによって、新しい筆(あるいは風鈴)を手に入れ、表現の幅を広げることができれば私のたくらみは大成功だ。あなたに新しい筆(あるいは風鈴)を与えよう。
「ジェネラティヴ・アート」とは — あなたに新しい筆(あるいは風鈴)を与えよう
投稿日:2019年5月19日 更新日:
執筆者:tesh